名前の迷宮(3)
何度か額に熊ん蜂がぶつかれば、ヤツには乾坤一擲の、意志があるやうな気がしてくる。
対人間への行動で、かくも意思を感じさせる虫といふのは、あとはゴキブリだらう。
こやつらも窮地に陥ると、人間に向かつて来る時があるのだ。
玉砕散華といふやつ、あるひはゴキブリに学んだものかもしれない。
ものの本によれば、サソリも、人を目がけて走り寄つて威赫するといふが、こちらには散華のつもりは毛頭無いだう。
なんだかそんな気がする。よけいなことを言ふやうだが。
「蜂すずめ」は「スズメバチ」とは関係は無いのだが、『蜂すずめ』を聴くたびに、瞬時それらがイメージの中で混合する。
同時に「スズメバチ」は「熊ん蜂」のことであつて、「熊蜂」とはベツモノであるといふ、いらない事まで瞬間的には考へてゐるかも知れない。
然し「熊(ん)蜂の飛行」もまた、ギターで演奏されることがあり、さらには「蜂鳥」といふギター曲も、歴としてあるのだから、このへんの一瞬のイメージの混同といふのも、それなりに錯綜した現実による理由がある。
それは例へば、「あかしょうびん」は「やましょうびん」とは違ふし、「やませみ」とも「かわせみ」とも違ふ。
然し「翡翠」と書いて「かわせみ」とも読み、「しょうびん」とも読み、「山翡翠」と書いて「やましょうびん」とも「やませみ」とも読むといふのと、似てゐるやうな・・・・似てないやうな。
ことのついでに言へば、「せきれい」には黄色と白色とがあつて、黄色であれば「きせきれい」、白ければ「はくせきれい」と、ついこの間まで信じて疑はなかつた。
これはほんとのことだ。
だが、ことはもつと複雑だつたのだ。
然し「いわみせきれい」「つめながせきれい」はまだしもとして、「せぐろせきれい」とは、腑に落ちない。
「せきれい」は全て、「背中は黒い」のだ。「背中は黒くて、腹は白いのは、せぐろせきれい」、「腹は白くて、背は黒いのは、はくせきれい」となると、
『ハッキリしろ!!
同じことじやあネーカ?どうやつて区別しろといふんだァ』と、まあ、腹をたてたくなつてしまふ。
腹もたてたし、今だによく判別もできない。しかし銘名者を、腹黒いヤツとは言はない。
ま、確かに、『腹は白いけど、はくせきれいではなくて、いわみせきれいでもなくて、もちろんセキレイ科だから、『ナントカせきれい』と名づけたいんだけど、これといつた特徴もない。
しかたない、背中の黒いのは、せきれいとして当り前だけど、当り前すぎて他のにはつけてなかつたから、これにすつか。まちがつてはゐないんだけんね』
と、まあ、なぜか脱力系の納得風な気分をもつて、銘名者の苦労はそれなりにわかる気もする。
(続く)
テクノラティプロフィール

何度か額に熊ん蜂がぶつかれば、ヤツには乾坤一擲の、意志があるやうな気がしてくる。
対人間への行動で、かくも意思を感じさせる虫といふのは、あとはゴキブリだらう。
こやつらも窮地に陥ると、人間に向かつて来る時があるのだ。
玉砕散華といふやつ、あるひはゴキブリに学んだものかもしれない。
ものの本によれば、サソリも、人を目がけて走り寄つて威赫するといふが、こちらには散華のつもりは毛頭無いだう。
なんだかそんな気がする。よけいなことを言ふやうだが。
「蜂すずめ」は「スズメバチ」とは関係は無いのだが、『蜂すずめ』を聴くたびに、瞬時それらがイメージの中で混合する。
同時に「スズメバチ」は「熊ん蜂」のことであつて、「熊蜂」とはベツモノであるといふ、いらない事まで瞬間的には考へてゐるかも知れない。
然し「熊(ん)蜂の飛行」もまた、ギターで演奏されることがあり、さらには「蜂鳥」といふギター曲も、歴としてあるのだから、このへんの一瞬のイメージの混同といふのも、それなりに錯綜した現実による理由がある。
それは例へば、「あかしょうびん」は「やましょうびん」とは違ふし、「やませみ」とも「かわせみ」とも違ふ。
然し「翡翠」と書いて「かわせみ」とも読み、「しょうびん」とも読み、「山翡翠」と書いて「やましょうびん」とも「やませみ」とも読むといふのと、似てゐるやうな・・・・似てないやうな。
ことのついでに言へば、「せきれい」には黄色と白色とがあつて、黄色であれば「きせきれい」、白ければ「はくせきれい」と、ついこの間まで信じて疑はなかつた。
これはほんとのことだ。
だが、ことはもつと複雑だつたのだ。
然し「いわみせきれい」「つめながせきれい」はまだしもとして、「せぐろせきれい」とは、腑に落ちない。
「せきれい」は全て、「背中は黒い」のだ。「背中は黒くて、腹は白いのは、せぐろせきれい」、「腹は白くて、背は黒いのは、はくせきれい」となると、
『ハッキリしろ!!
同じことじやあネーカ?どうやつて区別しろといふんだァ』と、まあ、腹をたてたくなつてしまふ。
腹もたてたし、今だによく判別もできない。しかし銘名者を、腹黒いヤツとは言はない。
ま、確かに、『腹は白いけど、はくせきれいではなくて、いわみせきれいでもなくて、もちろんセキレイ科だから、『ナントカせきれい』と名づけたいんだけど、これといつた特徴もない。
しかたない、背中の黒いのは、せきれいとして当り前だけど、当り前すぎて他のにはつけてなかつたから、これにすつか。まちがつてはゐないんだけんね』
と、まあ、なぜか脱力系の納得風な気分をもつて、銘名者の苦労はそれなりにわかる気もする。
(続く)
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