植物園で

ここでは、 植物園で に関する情報を紹介しています。
植物園で
 夏から秋にかけて、散歩といふものをしなかつた。

 とじこもつてゐたのだ。

 どうもブログを始めてから、妙な暮らしをしてゐる。不健康だ。

 さすがに十一月も末になると、蟄居にも飽き、出歩きたい気分にもなる。

 久々に植物園に出かける。

 植物園には植物といふよりは鴉を見に行くのである。

 鴉といふ鳥は、なかなか楽しめる鳥であるので。

 それは自分の性向といふものなのだらうが、しかし、鴉が大好きだといふのではない。好悪の感がこもごもしたところに、なんだか惹かれるものがあつて、鴉をながめてゐる。
 植物園の中には、物見の櫓といふか、台座のやうなものがあつて、それの向かうが急な斜面になつて落ち込んでゐる。

 芝が植ゑられてゐるその斜面が、鴉の、なぜかわからぬが溜り場になつてゐるのである。

ことに夕刻にはおびただしい鴉が集つてゐる。

 それを知つてゐるから櫓を目ざして歩いて行つたら、いつの間にか櫓の下に喫茶店が店開きをしてゐる。

 車椅子のスロープのあたりを改造したものだが、以前そこのところがどうなつてゐたかはちよつと思ひ出せない。

 鴉ほどではないにしろ好奇心があるから入つてみる。

 妙な味の、カプチーノを飲んだ。

 食ひ物屋が、そばにできたのであれば、とうぜん鴉にも影響があるだらうと、勇んで外に出て斜面を覗いたが、あにはからんや、ここの喫茶店は、残飯などは徹底的に内部処理をしてゐるのでもあらうか、鴉の数は少かつた。

 鴉がゐないならばすることもない。

 そそくさと帰る。

 金木犀の匂ひがした。

 夏の暑気がきれてやつと出歩かうかといふ気分になる時分には、毎年のことだがこの花の匂ひがどこやらでする頃になつてゐるのだ。

 もみぢの下を行く、女坂は通らないで、斜面をまつすぐに走る階段で帰る。

 みように蜂が多い。

 スズメバチといふのかアシナガバチといふのかその名を知らないが、二センチくらいの茶色に黒縞のやつである。

 この階段の際にはナラが多い。

毎年のことだが、ひそかに植物園の栗を狙つてゐるので、そのでき具合を検分してゐたらこのハチが地面すれすれをたくさん飛んでゐる。

 足元をも飛び交ふ。

 一匹が、蟻の穴のような小さな穴に頭を突込んで羽を震はせてゐる。

 無論踏みつぶす。

 蜂といふものはグシャリとつぶれるものである。

 蟹を踏みつぶしても、かういふ感触だらう。

 栗のできはよろしくない。

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