雪釣り
子供たちが、雪釣りといふ遊びをするといふことを聞いて、ここが南の地であることをあらためて知る。
雪中にまみれて育つ北の子供にとつて、口を開いて受けとめた甘い雪があつたとしても、それは広大かつ長大な白い季節の記憶のほんの片隅に、しまひ忘れられてしまふだらう。
あるかなきかに舞ふ風花の中で、南の子供は、雪のもたらす心象をもつとも鮮明に記憶に膨らませるために、紐に吊つた炭のかけらをかざすのだ。
よし長い辛棒の果てに、地の汚れにまみれない、白い鞠を諦めなければならなくとも、記憶に降り続く雪はそれ以後、純白であり続けるかもしれない。
紐の中央に炭を結びつけ、降る雪の中でその紐の一方を捧げ持つ。
紐のもう一方は垂れてゐる。
舞ひ落ちる雪片を、紐の中央にくくりつけた炭で掬ひ取つて行く。
炭の上に半球状に雪が積もれば、垂れてゐるもう一方の紐の端に持ちかへて、さらに炭で雪を掬ひ取つて行く。
気が遠くなるほどの時を経て、炭はやうやく白い雪の球になる。
あるひは無数の炭のかけらが、つひに白い球の夢をあきらめて、そちこちの路地に捨てられるのかもしれない。
気が短い子供は、紐にくくりつけた炭を、降り積もつた雪の中に放り込むのだ。
けれども地に落ちた雪は、すでに雪ではないとみる子供は、このやり方にいさぎよしとせずに、雪釣りの夢を、空をあふいで待つ。
舞ひ降りてくる天のものである雪を、地のものとなる前に、白い鞠にとどめたくて。
子供たちが、雪釣りといふ遊びをするといふことを聞いて、ここが南の地であることをあらためて知る。
雪中にまみれて育つ北の子供にとつて、口を開いて受けとめた甘い雪があつたとしても、それは広大かつ長大な白い季節の記憶のほんの片隅に、しまひ忘れられてしまふだらう。
あるかなきかに舞ふ風花の中で、南の子供は、雪のもたらす心象をもつとも鮮明に記憶に膨らませるために、紐に吊つた炭のかけらをかざすのだ。
よし長い辛棒の果てに、地の汚れにまみれない、白い鞠を諦めなければならなくとも、記憶に降り続く雪はそれ以後、純白であり続けるかもしれない。
紐の中央に炭を結びつけ、降る雪の中でその紐の一方を捧げ持つ。
紐のもう一方は垂れてゐる。
舞ひ落ちる雪片を、紐の中央にくくりつけた炭で掬ひ取つて行く。
炭の上に半球状に雪が積もれば、垂れてゐるもう一方の紐の端に持ちかへて、さらに炭で雪を掬ひ取つて行く。
気が遠くなるほどの時を経て、炭はやうやく白い雪の球になる。
あるひは無数の炭のかけらが、つひに白い球の夢をあきらめて、そちこちの路地に捨てられるのかもしれない。
気が短い子供は、紐にくくりつけた炭を、降り積もつた雪の中に放り込むのだ。
けれども地に落ちた雪は、すでに雪ではないとみる子供は、このやり方にいさぎよしとせずに、雪釣りの夢を、空をあふいで待つ。
舞ひ降りてくる天のものである雪を、地のものとなる前に、白い鞠にとどめたくて。
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