Houshakuki

カテゴリ 

  • 目次(2)
  • 草の宿(354)
  • 小説(83)
  • フラメンコ(43)
  • 雑文(44)
  • 楽器(25)
  • ギター(43)
  • 未分類(43)

最新の記事 

楽譜・雑誌 

アリア A-120F-CWE 

楽器、音楽ショップ 

【楽器・音楽機材市場】
品揃え充実。特殊な民族楽器以外は洋・和の楽器ほぼ網羅。




■クロサワ楽器店

■ギター格安サクラ楽器

■楽器総合ショップ石橋楽器

■あなたのピアノ、高値で売れます

■CD・DVD市場

■楽天ブックス 洋・和書籍。楽譜他。

■楽天ダウンロード
音楽・動画・ソフトウェア・書籍・コミック他


SLG-120NW-LAB 

フラメンコギター 

QRコード 

QRコード

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/-- --:--|スポンサー広告

花咲けば思い出す【草の宿(347)】

花咲けば思い出す【草の宿(347)】

「あんちゃん、すまんなあ、風呂焚きをさせてしまうとは」

 いきなり焚き口の上の窓から、男がひょいと顔を出しました。

「何だ、鹿毛や、おまえも風呂焚きが懐しいか。うむ、薪が燃える匂いは良いものだな。こいつ、鼻をびくつかせているじゃないか」

 男はおもしろそうに、馬と尋夫に向けて話しかけました。

「あんちゃん、どうしたね。浮かぬ顔をして」

「ハリエンジュの花が咲きそうなんだよ」

「おお、あれか。あれは良いものだ。あれだけのハリエンジュはなかなか山の中に入っても見つかるまい。だがそれがどうした、ハリエンジュもそろそろ咲いて不思議じゃないさ」

「いや、・・・ついこの間のことなんだけど、すっかり忘れていたよ。俺のところに、町から来た蜂飼いのおじさんとおばさんがやって来たんだ。この坂を下りたところに、新しいジープにトレーラーを引かせて、蜂の箱を摘んで来たと言ってたな。
 栃の花とハリエンジュの花が目当てらしいんだ。・・・だけど俺はなんだか、真新しいジープのおじさんとおばさんに気圧されちまった。なにもしてやらないでいるんだが、なんだか気になるな」

 その言葉が終わらないうちに尋夫の頭の上で、男が大声で笑い出しました。

「そいつは奇遇だ。その御仁夫婦というのは、俺も知った人のような気がするな。蜂飼いの夫婦なんぞ、このあたりにそんなには来ないはずだからな」

「へえ、そいつはビックリだ。おじさんの知り合いとは。まだジープ暮らしをしているのかな」

「へへえ、あんちゃん気づかなかったか。あの二人はとっくに町にかえっちまったよ。なんでもあっちこっちでマムシに出くわしたらしくて、山の中に二日いたばかりで、とっととお帰りになったのだ。
 何でそんなことを知っているか?なに、山を下りるときに、俺の畑のそばで一休みして、旦那はぼやいて行ったのさ。カカアの方は、さんざんに山暮らしに悪態をついておったぞ。マムシは出るは、夕方になれば山蚊とブヨの猛攻撃だからなあ。ジープの中に、蚊の大群が渦巻くようになだれ込んできたらしいぞ。
 なかなかいい女だったが、ほっぺが桃みたいに腫れ上がっておったぞ。悪態もつきたいのは山々だが、町衆というのはそんなものさ」

「・・・帰っちまったのか。そうか、山蚊とブヨにやられたか」

 やはり小屋に寝泊まりするように勧めるべきだったろうかと、尋夫はかすかに悔いるような気がしてきました。

「妙な夫婦だったろう?どうだったい」

「・・えっ?・・・そう言えば、二人して同じ格好をしていたな。着るものが同じだった。俺はああいう格好をしているおじさんとおばさんを見るのは、初めてだった」

「おうっ、それよ。驚くじゃないか。俺も、あの同じ格好の二人に、どぎまぎしてしまったぞ。ありゃあいったい何なんだ。俺はこっ恥ずかしくてな、旦那の顔をまともに見ることができなかったぞよ」

 男はまたしてもがらがら声で大笑いをするのです。尋夫はかすかに腹の中で唸りました。

「おじさん、もうそろそろ風呂に入ってもいいよ。湯加減を見てくれよ。たいていいいはずだ」

「おお、こいつは早い、もう湧いたか。あんちゃんの言うことは本当だ。五右衛門風呂というのは、こんなにも湧きが早いのか」

「おじさん、ゆっくり入ってくれよ。俺はそのうちに酒を用意しよう。トビダケは味噌汁にぶち込むからな、それでいいだろう」

「何だと、いま何と言った。酒だと。あんちゃん、酒を飲むのか」

「じいちゃんの酒がたっぷりあるのさ。そうだ、酒で思い出した。小野のおばさんも、ハリエンジュの花が咲くのを楽しみにしていると言ってたな」

「誰のことかい」

「いや、俺は山の中にいて、なんだかすっかり忘れていることがいくつもあるような気がしてきたよ。・・・おじさん、今日は泊まっていきな。湯が熱くなりすぎて水を入れるときには気をつけなよ。イワナが飛び込んでくるかも知れないからな」

「わははは、なんぼ山でも、そんな豪儀なことがあるわけはない。五右衛門風呂で、酒の肴を手に入れるなんて事はな」

 男の笑い声は、尋夫の心も浮き立たせます。

「鹿毛よ、おまえにはなにもやるものがないな。そうだ、米のとぎ汁を持ってきてやろう、待ってな」

 尋夫は、馬の鼻面を軽く叩きながら言いました。黄昏時の馬からは、昼間の日向の匂いが濃く漂っています。



テクノラティプロフィール アクセスアップ・SEO対策・検索エンジン登録

関連記事
2008/02/16 10:08|草の宿TB:0CM:0
コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら
http://houshakuki.blog36.fc2.com/tb.php/733-02ee8266

サイトとウェブの検索 

Yahoo! JAPAN

  • ウェブ全体を検索
  • このサイト内を検索


携帯検索
 ★検索生中継[byYicha]

ネットで学ぶ音楽 

■ネットでギター講座

■ネットでピアノ講座

■ネットでサックス講座

■ネットでベース講座

■ネットでドラム講座

■ネットでボーカル講座

トレーニングブック 

作曲 

音楽【耳】、他 

クラシックギターの銘器 

Copyright(C) 2007All Rights Reserved.

Powered by FC2ブログ. template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。