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弓矢【草の宿(341)】

【草の宿(341)】

「そうだ、あんちゃん、俺には妙なヘキがあってね。山に来たならば、これをしなけりゃ気が済まないことがある」

 うつろな気持ちになりかけていた尋夫は、男の声に気を取り直しました。

 半ズボンの腰にぶら下げていたイタヤ材の鞘から、カシャリと小気味のいい音をさせて、男は鉈を抜き取りました。

 男の腰鉈は、尋夫もずっと気になっていました。前を歩く男の腰にそれを見つけたとき、尋夫はそっととって返して、自分も何食わぬ顔で腰に鉈をぶら下げようかと思ったほどです。

 なぜならば、祖父は山歩きの時には必ずと言っていいほどに鉈を腰にくくりつけていたからです。尋夫にはその習慣は身に付いていません。けれども腰に鉈を下げずに山に出向くのは、なんだか気が引ける気がしたのです。

 ままよとばかりに丸腰で来たことを、男が抜いた鉈を見たときに、尋夫は少し後悔しました。

「・・・あんちゃん、切れ物を持ち歩くのはいやかい」

 尋夫の気持ちを見透かしたかのように、男が聞きました。

「いや、・・・おじさんの鉈を見たときに、俺もそうしようかと思ったんだけど」

 尋夫はおぼつかないような返事をしました。

「そうか、だが山に入るときには、持った方がいい。なにがあるかわかりゃあしない。とは言ってもだ、俺がするのは子供の遊びさ」

 男はやおらかたわらに生えていたネコヤナギの一枝に鉈を打ち込み、手慣れた仕草で枝を払いました。たちまちツンと匂い立つヤナギの切り口。

 男はポケットを探って綿糸の束を取り出し、鞭のようにやや湾曲したネコヤナギの枝の上下にそれを結びました。めざましい速さです。

「おじさん、遊びでもするのかい」

「うん、俺はこいつが好きなんだよ」

 たちまちにできあがったを、二度三度とカラ引きをしながら、厳つい男の相好が崩れるのを、尋夫は黙って見守りました。

「手応えは今ひとつだが、ヤナギだから仕方がない。ヤナギというのはいい木だ。を作るのも簡単だが、の方もこれでまかなえるからな」

 小さいころに出会った年長の遊びの大将に、目の前の男によく似た子供がいたようです。できるだけ真直ぐに伸びた枝を選び、を作るよりもさらに念入りにを作り出した男を見つめながら、尋夫はそんなことを考えていました。

 その遊びの大将が誰だったか、名前が思い浮かびません。中学生の帽子をかぶっていたような気もしますが、麦わら帽をかぶっていたような気もします。

 思い出せないことにいらだって、尋夫が顔をしかめれば、男はめざとくそれを見て取り、問うてきました。

「奇態に思うだろう、大の大人がこんな事をするのが」

「いや、小さい頃のガキ大将に、おじさんによく似た人がいたような気がしてならないんだ。名前が思い浮かばなくてね」

 尋夫の返事に、男は意外だという顔を作り、それから大口を開けて笑い出しました。

「そう言うことか、それならばそいつは、俺だったかも知れないよ」

「まさか・・・」

「なに、俺は二十歳のようなものだ」

 男の笑いにつられて、尋夫も笑いました。

 天はヤマツツジ色のはだら雲が覆い尽くし、男の顔の陰影を濃くしています。
 けれどももうすぐに来る、黄昏の残光がわずかに残る時刻には、男にも尋夫にも、年齢は消えて無くなるもののようにも思われるのです。

 男はできあがったばかりのに、やや薄緑色の若枝のをつがって、右肩をぐいと後ろにそらします。ヤナギといえども太枝の弓は、男の腕力に実に剛のもののように見事にたわみ、キリキリキリと綿糸が鳴りました。

「那須与一もかくや・・・」

 男は独りごちてを放ちます。その手つき、集中の度合いは、尋夫が予想したものを超えていました。乾いた音を発して飛び出したは、尋夫が思い描いた軌跡の何倍も大きな弧を描き、何倍も遠い距離に消えたのです。

「・・・すごい」

 一瞬声を失って、飛び去った矢の行く末を見下ろし、尋夫がやっと感嘆の声を漏らすと、男は満足そうに笑いました。
 子供の遊びの矢の距離ではありません。

「おじさん、すごいじゃないか。俺も何度も弓矢で遊んだことはあるけど、こんなに飛ぶ矢を見たのは初めてだ」

「どうだ、何とも気分の良いものだろう。あんちゃん、矢の行く末を見届けたかね」

「最後は見えなくなっちまったよ。おそろしく飛んだね」

「まあまあの飛びだな。だがよく飛ぶばかりじゃダメだ。あの根方を今度は狙ってみよう。あれに当たると思うかね」

 男はもう一度矢をつがって、先ほど雪庇の原因と指し示した岩のそばの、黒い切り株にねらいをつけました。尋夫は無言で見守ります。

 放たれた二の矢は、今度は弧を描かず、水平に鋭く飛び、小気味よい音を立てて切り株に命中しました。切り株から黒い木っ端が舞い上がって、突き立った矢が震えるのが見えました。

「おじさん、おじさんは弓道でもやってるのかい」

 二度までも度肝を抜かれては、そうとでも言うしかありません。尋夫はただ感心して聞いてみました。

「弓道が聞いて呆れるよ。こいつは山遊びだ」

 男は飛んでいった弓矢を目で追い、尋夫の声に鼻を鳴らして少し笑いました。

「おい、あんちゃん、あの切り株だがな。どうだい、なんだか妙に気になる切り株だな。あれの根っこにあるものは何だ」

 男は言いながら、シダをつかんで崖を横切ろうとしています。切り株の下に、白い何かが見えます。尋夫も男が見つけたものに気づきました。素早く男の後を追いかけます。



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2008/02/16 10:03|草の宿TB:1CM:0
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