秘儀・馬の骨【サイレントギター日記(4)】

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サイレントギター日記(4)

 弦を換へる。
 楽器になぢむまでの短い時間が、弦が新しいときなのだな。

 3、4指を強めるために、例の方法を繰り返してゐるが、もつと凄い方法を見つけたぞ。例の方法も、これがギターの練習かと思はれるほどに肩が疲れ、息がはずむほどであるが、今度のやり方はもつと厳しい。

 トリルにするだけであるが。押弦の仕方はこれまでと同じだが、トリルにするとまだまだ3、4が独立してゐないことがわかる。
 ひとつのポジションで1弦から6弦までを辿るだけで、暈がしてくる。油汗が出さうになる。呆れ返るほどに3、4に力が無い。頭に血が上つた。
 なんのこつちや、ぜんぜん進歩してないではありませんか。

 これは音楽がどうのとかいふ段ではない。ただリハビリのやうなものだ。

 生まれてこのかた、こんな風に指を使つたことがない。つまりヨイヨイの生活をしてきたものを、ただ今からまつとうにしてやるといふのだから、これはリハビリ以外の何物でもない。

 こんな事をしてゐたら、体に毒なのではないかと思はれるほどに荷酷だ。これが3、4を強め、独立させるために必要かどうかといふことはわからない。何しろ今日見つけ、始めたばかりの練習法である。

 これがどんな結果をもたらすかは、もう少し続けてでなければわからない。これだけ負荷があつて効果がさつぱり無いならば、それも笑へる話といふことで。

 ともかく、これこそは純粋に自家用に開発した練習法である。されば、これこそが秘儀といふものであらう。

 秘儀としか言ひやうもない。油汗をながして、四六のガマではあるまひし、大ぴらにできるものでもないからだ。

 3、4指を骨から剛毅にしやうといふのだから、トリルには、似合はない気もするが、藤沢周平さんの小説の表題を借りて、ここは豪儀に『秘儀馬の骨』と、この練習方法に命名してやつたぞ。

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