草の宿(49)
少年は、栃の木を、長いこと見つめていましたが、思いを留めるように、頭を一振りして、ストックに全体重を乗せて、それを後ろにはじき飛ばすような勢いで、スラロームを再開しました。
およそ十三年も昔の思い出です。少年の年齢の、十三年前と言えば、それこそ自分の身の丈を、いくつ重ねても足りないような、遠い日のことに思われました。記憶が克明に、脳裏に刻み込まれているのは、不思議な気もします。
『だが、本当にそうなのか?』
少年は、滑走をしながら、自問しました。
昔とは、なんだろう、と少年は思いました。
『昔とは、古い、今ではない時間だ。それは間違いない。だけど、こうしてスキーで雪原を走っている今と、十三年前の、橇のなかの自分とを隔てているのは、はたして時間だけなのだろうか。隔たっていると思うことが、間違っているのだろうか。自分が生きてきた時間というのは、いったい記憶がもたらす、一種の味覚みたいなもの、それと同じものなのだろうか・・・・・』
過去に思いを募らせると、不意に息を切らせてストックをこいでいる、今の自分に、不思議な思いがしてきます。自分が、今ではなく、昔の自分と、まるで同じなのだという思いがしてきます。
『自分は、生まれたときから、少しも変わったり、成長したりできない人間なのではないのだろうか』
テクノラティプロフィール
少年は、栃の木を、長いこと見つめていましたが、思いを留めるように、頭を一振りして、ストックに全体重を乗せて、それを後ろにはじき飛ばすような勢いで、スラロームを再開しました。
およそ十三年も昔の思い出です。少年の年齢の、十三年前と言えば、それこそ自分の身の丈を、いくつ重ねても足りないような、遠い日のことに思われました。記憶が克明に、脳裏に刻み込まれているのは、不思議な気もします。
『だが、本当にそうなのか?』
少年は、滑走をしながら、自問しました。
昔とは、なんだろう、と少年は思いました。
『昔とは、古い、今ではない時間だ。それは間違いない。だけど、こうしてスキーで雪原を走っている今と、十三年前の、橇のなかの自分とを隔てているのは、はたして時間だけなのだろうか。隔たっていると思うことが、間違っているのだろうか。自分が生きてきた時間というのは、いったい記憶がもたらす、一種の味覚みたいなもの、それと同じものなのだろうか・・・・・』
過去に思いを募らせると、不意に息を切らせてストックをこいでいる、今の自分に、不思議な思いがしてきます。自分が、今ではなく、昔の自分と、まるで同じなのだという思いがしてきます。
『自分は、生まれたときから、少しも変わったり、成長したりできない人間なのではないのだろうか』
テクノラティプロフィール
この記事のトラックバックURL
http://houshakuki.blog36.fc2.com/tb.php/174-83f138e2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック




















