桐の枝に野ブドウの蔓が【草の宿(47)】

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草の宿(47)

 野ブドウの蔓が、桐の枝にからみついていました。蔓には、野ブドウの実が幾房も残っています。

 少年は、めざとくそれを見つけ、滑走を停止しました。

 桐の木は、少年の胴回りほどの太さです。おそらく、雪がなければ、こののブドウの実を取るためには、つるりとした桐の幹肌を登るのに難儀しなければならないことでしょう。

 少年は、蔓に残っている野ブドウの実を摘み取りました。
 寒風に、幾日もさらされた野ブドウの実は、かすかな枯れ葉のような芳香があり、口に含むと、ひなびた甘みが広がります。
 野ブドウ特有の、鋭い酸味は失せていて、あのつややかな紺色も失せています。皺だらけの、濃い、褐色の実生です。

 桐の枝には、黄色い実が、実っていました。柔らかな産毛に包まれた実です。夏の日には、大振りの葉陰に、濃紫の花をつけていたものが、寒風にさらされた実は、慎ましく春の日を浴びているのでした。

 およそ、無彩色の冬の景色の中では、かすかな、慎ましやかな色彩でも懐しく思われるのです。

 宿り木の緑は、真冬でも色あせることはありません。その豊かな葉の茂りが、衰えることもありません。そして、宿り木の実ほどに、冬の林の中で目を引く色彩はないでしょう。

 ややオレンジ色を含んだ、透明な赤い実は、眺め入って飽きることはありません。
 冬の野鳥は、これを好んで食べるのですが、甘みはほとんどありません。
 宿り木は、ブナの枝の、幹から枝が伸びるところに多く見られました。
 雪の季節、子供たちは、緑の色に飢えてくると、この宿り木を幾房か折り取り、自分の毛糸の帽子にさしてみるのでした。



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