ネズミとイタチとテン【草の宿(46)】

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草の宿(46)

 クマザサの藪近くには、野ネズミの足跡も散乱していました。野ネズミの足跡は、まるで野鳥のそれのようです。ペン先で彫り込んだような足跡で、ザラメ状の雪の上では、はっきりとその形状はわかりません。しかし、粉末状の雪の上では、その小さなつめ跡も、くっきりと残っているのでした。

 人の指ほどの太さの跡が、ふたつ並列して続く足跡も、見つかりました。それは貂の足跡です。

 少年は、一度だけ、貂を見たことがありました。それは強い吹雪の日でした。やはり、スキーで、山歩きをしているときでしたが、灰色の視界の中に、いきなり黄金色をした獣が走り出たのです。大きさはイタチを少し大きくしたほどに、見えました。降りしきる雪の中で、一閃した光線のようでした。
 鮮やかな毛の光沢は、無彩色の吹雪の中で、自ら光り輝くように見えたのです。

 少年は、その時のことを思い出し、動悸が高まるのを覚えました。

 稜線は、野生の生き物の存在に、胸が高鳴るところでした。

 少年は、ゆったりとした動作で、ストックでこぎながら滑走します。スキーは、それだけの力で、アイスバーンの雪面を自在に移動できるのでした。



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