アイスバーンの滑走【草の宿(44)】

ここでは、 アイスバーンの滑走【草の宿(44)】 に関する情報を紹介しています。
草の宿(44)

 斜面を登り切ると、穏やかな起伏が続く、稜線でした。
 少年は、今登ってきた斜面と、逆の方向に落ち込んでいる斜面を見比べました。

 三月の陽光は、ふたつの斜面に、極端なまでに陰と陽の様相を作り出しています。
 登ってゆく太陽に照らされた斜面は、暖かなミカン色に染まり、陽がまだ当たらない斜面は、濃い灰色の無彩色の世界でした。

 少年は、伸びやかな気分になって、スキーを滑走させました。雪面の氷結は、まだ当分はもつでしょう。ストックの一漕ぎで、また、エッジの一蹴りで、スキーはやすやすと滑走をしました。もう、何者もとどめるものはありません。
 少年のスキーは、アイスバーンの上を、鋭い音を発しながら飛ぶように滑りました。



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