おかみさん、居住まいを正す【草の宿(37)】

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草の宿(37)

「ごめんくださいまし」
「おかみさま、このたびは、私の息子が、大変お世話になりました。赤の他人の私の息子に、いろいろお世話をいただきまして、お礼の申し上げようもございません。ご面倒をおかけいたしました」

 瑞子に導かれて帳場に入ってきた、迷子の子のお母さんは、おかみさんの前で、深々と頭を下げました。

「ご心配でしたでしょう。あの子は大丈夫。今はよく眠ってますよ。中本さん、あの子の部屋にご案内して」

 おかみさんの言葉に、瑞子は目でうなづきました。

「まあ、ともかく一安心だ。しかし瀧側さん、えらく早い到着だねえ。もう少し、かかると思ったが」

 シューバの男が、声をかけました。

「はい、夢中で来ました。みなさまにも、本当にご迷惑をおかけしてしまって」

「まずは、あの子の様子をごらんにおなりなさい。安心するでしょう」

 おかみさんが、二人の会話を遮るようにいい、瑞子は女の人の背中にそっと手を回して、帳場を出て行きました。

 二人が帳場を出て行くと、おかみさんは、小さくため息をつきました。

「これで、あの子のことはまず一段落です」

 おかみさんは、お茶をぐっと一飲みして、男たちに向き直りました。なんだか居住まいを正した風でした。

「お二人とも、びっくりなすっちゃいけませんよ。杉山さんが、先ほど亡くなりました。」

 男たちは、きょとんとした目で、おかみさんを見つめました。



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