父は集材所の山小屋泊まり【草の宿(34)】

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草の宿(34)

「お巡りさん、樺島さん、本当にご苦労様なことでした。あの迷子の子は、おかげさまで、今、おだやかに眠っています。樺島さんを見たら、安心するでしょう。ここに来る道々は、大声で泣いていたと言うことですけど、ここに来てからは、泣いていません。お風呂に入って、ご飯もしっかり食べました。だいぶん疲れたんでしょう、すぐに寝入ってしまいました」

 おかみさんは、ここで言葉を切り、二人を見つめ、再び話し出そうとしましたが、シューバの男が、先に声を出しました。

「あれの父親は、今日は集材所の山小屋泊まり、そこで俺が連れて帰ろうとやってきたんで。あれの家に電話をしたら、主任の奥さんも、是非一緒にということだったんだけど、何しろ、あの雪上車は女の人の乗るものじゃなくってね。車が道なりに走るところを、あれだと、野越え、山越えで、一直線に走るから、寒川からでも三十分とかからない。車だと、雪道をそろそろ走って、一時間はかかるでしょう。子供が心配だから、俺がひとっぱしり、行ってくるよって、そういって飛び出してきたんですよ」

「樺島さん、ほんとにご苦労さまでした。あの子も、どんなに安心するでしょう。あの子はご存じなんですか」

「知っていますよ。主任は、なかなかいいやつでね。あの家には、しょっちゅう顔を出しているから、尋夫は、あっ、あのガキは、尋夫って言うんですがね、よくなついてくれてるんで。なつかれるってえと、俺も、何ともあれが可愛くてね。あれの、お袋さんから、夜になっても帰ってこないと聞かされて、俺もだいぶん心配してたとこなんですよ。それが、こいつからの連絡でしょう、暇なお巡りで、いい身分だと、常日頃言ってたところが、さすがに、ソツなく、俺に連絡してきたところが偉い。おい、おまえ、偉いよ」

 シューバの男は、嬉しそうに話を続けました。

 おかみさんは、その話を、じっと聞いていましたが、ついに、その表情に、一種のもどかしさを浮かべるのでした。けれども、二人の男は、おかみさんの、見開いた目が、自分たちへの感謝の徴だとしか思えなかったのです。



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