巡査の家族【草の宿(20)】

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草の宿(20)

 皆が、不思議に思ったのは、男の子がどこからやってきたのか、見当がつかないことでした。

馬代の子供達を知っているのは、馬代の子供達なのですが、先刻、教会に集まっていた小学生の誰も、あの子供を知りませんでした。

 となりの町から一人で遊びにきたにしては、子供が小さすぎます。
 箱橇を見つけた、郵便局の裏山の向こうには、山々が連なっていて、尾根伝いに橇が走り続ける筈がありません。

 教主が言った通り、男達は箱橇を引いて、教会から馬代派出所へと出向きました。

 派出所には、巡査が、家族ぐるみで住まっていました。

 男達は、派出所の奥で、巡査一家が、陽気に浮き立っているのを、不審に思って尋ねました。

「一体なんでまた、こんなににぎやかなのかね」
「うちは、子供が三人とも娘なんだ」
「それは知っているが、それがまたなんで」
「今日はひな祭りだろうが」

 巡査は、酒気を帯びていて、顔から、はげ上がった頭頂辺まで赤く光っていました。

 はしやぎ回っていた、巡査の娘達は、橇の中の男の子が迷子であると聞いて、歓声を上げました。迷子と言うものを、彼女達は、初めて見たのです。

 女の子達は、口々に派出所が、つまり父親が、箱橇の子供を引き取る事を、自分達の権利のように主張しました。

 男達はそれをかわし、派出所長本人に、子供を馬代荘で預かることを提言したものです。

 男達の目には、陽気な一家の様子が、箱橇の中で、凍えついたように押し黙った子供には、凶暴過ぎるもののように見えたのではありました。

「よし、あんた達に、明日まであづけよう。調書も明日にしよう。明日になればどこかから連絡があるだろう。どうも今日は飲んでしまったし、馬代荘なら」

 巡査の言い訳に、男達は安堵し、再び隊列をなして派出所を離れたのでした。



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