月夜の青い風紋【草の宿(13)】

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草の宿(13)

 青いゴーグルをつけてでもいるかのように、すべてが青色に染まっていました。

 杉木立だけが、黒々とした固まりで、広い雪の原に、尖ったオブジェのように見えました。その黒い色も、青い色が濃縮されて、できあがったもののようです。

 灌木は、冬がれた枝に、雪をモールのようにまとっているせいでしょう。雪原よりも薄い、青みを帯びた銀色に輝いていました。

 少年は、自分の衣服を見ました。自分自身も、あの樹木たちのように、銀色に輝いてはいないかと思ったのです。少年の着ている、黒いヤッケと、オーバーズボンは、輝いてはいませんでした。自分だけが、青色に染まっていないことが、なんだか不満な気がしました。

 満月は、中空にありました。
 常よりも大きな月が、金色に輝いています。その金色の月に照らされた世界が、深い青色に浸されているのが、不思議です。

 冬の、すべての夜の世界が、青く輝くわけではありません。月が明るい夜でも、雪の原が、必ず青く染まるのではないのです。

 大気のせいもあるのでしょう。
 ある夜、不意に、窓が青く輝いているのに気づくことがありました。思わず窓により、のぞき見た外の風景が、青色に染まっているのを見て、息をのんだことがこれまでにもありました。
 けれども、こうして、その青色の世界にスキーを着けて出てみたのは、その夜が初めてのことでした。

 雪面は、固く凍てついています。昼の太陽のぬくもりで、湿った雪が、夜の寒気で凍ったのです。あるいは、この青い発光する世界は、この凍てついた雪の、氷状の表層が月光を反射するためにできあがるのかもしれません。
 長い冬の季節でも、何日かしか見られない、特別な夜なのです。

 雪原を刻んだ風紋が、複雑に絡み合い、うねりながら銀色に輝いています。その風紋の中に、ゆっくりとスキーを進めていくと、めまいがしそうでした。

 スキーのエッジに飛び散る雪が、色ガラスの粉のようです。

 白い、冬の野ウサギは、この青い世界でどんな風に見えるのだろうと、彼は思いました。



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