風女房
どうも何だね、ダブダブ姉妹のピーちやんにツーちやんか、なかなか気がきいてゐましたよ。
世間様てへものは、うつらふものなりつてか。
俺も、なんだ、世の中にウトくつてイケねえや。
この際だからつてえんで、久々に『ええとこ』んとこと『無事でいい』んとこにも顔を出して、日頃の無沙汰見舞ひのつもりが、ずいぶん遅くなつちまつて。
それにしてもどこの姐さんも、いつの間にやらすつかり新しい身づくろひをしてるんだもんなあ。
『地所』をたつぷり持つたりしちまつて、すつかり見ちげえて、「これはトレンディーな『ぶんぽう会席』どすえ、おめし上がりになつて」なんて言ふもんだから、すつかりゴチになつて、ずいぶん長居になつちやつた。
・・・・おおい、帰つたぞお。
シッカシうちの風女房、アイソもコソも無い奴だなあ。
世間を見渡してきたら、しみじみ感じてしまふねえ。
亭主がやつと戻つて来たといふのに『お帰んなさい』の一言もねえんだから。
それどころではありません。
「おまへさんねえ、遊んでばつかゐたら、それまでなんだヨォ。ジンセイ、棒に振つていいもんかね。」と言ひたさうな、何とも不景気な面で迎へてくれるではないか。
さうかひ、さういふ奴だつたのか、てめへつてやつァよお。
いくら広い『地所』と『会席』に縁がねえ暮らしだからつて、もちつと、はんなり、しんなりの風情があつてもいいじやあねえか。
はつきり言つてをくが、俺はおめえが最良の連れあひだなぞとは思つてもゐないのだぞ。
添ひ遂げやうなんぞと、思つちやあゐねえや。奇妙に手に馴染むのはやめてをけ。ケッ、いつ出てつて貰つたところでこちとら、痛くも痒くもねえんだ。
オメエといふヤツァなあ、誰にも使ひ手がねえ、貰ひ手がねえつてから、マァ情をかける気でをいてやつてるんだ。
ちよいとダブダブ姉妹やら『ええとこ』やら『無事でいい』の姐さん方んとこに出向いたからつて、不愛想になるんじやあねえ。
・・・・あんだあ、愛想がねえのは生まれつきだと。
チェッ、その言ひぐさが気に入らねえんだよ。
なんだよ、愛想つてのはどうすりやあいいかつて?
このやろう、よおし、この際だから教えといてやらあ。
まず、亭主が帰つて来たらチョックラ小首をかしげてだな、
『お早い丘縁でござい舞。臣足をお洗いいたしますの、剃れとも御種をお召し上がりに成増の』とか、
『亜煩、待つ手田湾、さびし勝田の四。』とかと、・・・・
おや?何がおかしい。
ゲラゲラそつくり返つて笑ひやがつて。ぞんざいなやつだなあ。
てめえの大口に『++++++++++++++++++++』、してやりてえよ。
何のことですかあ?チャックをしてやりてえと言つたんだよ。
気の効いたタチマワリも出来ねえ、物は覚えねえ、身なりも良かあねえ、御先祖サマだつて大したものはゐねえ。
それが証にやあ未だにばーじよん2、2じやあねえか。いいか、エエトコのムスメつてえのはなあ、ばーじよん10ッテエのがゐるんだぞお。
・・・な、な、なんだ、なんだ、ばーじよん10てえのは10回も再生手術のアチラのせわになつた御新造サマのことだつて?
『+++++++++++++++++++』みたいなお手当ての痕が、あつちこつちにある方たちだとお・・・コンチキショー、なんてえことをヌカシやがんでえ。
色気のイの字もねえ野郎が、くだらねえ見栄をはつてねえで酒を持つて来い。
・・・あんだよ、酒はネエだとお。クソババア、無きやあ買つてくればいいじやあねえか。横丁によお、おでん屋がまあだ店を開いてゐるんだ、徳利を持つて行つて来い。
・・・あんだとお?・・・アタシがゐない間に、まあた出歩いてヘンテコリンなことをして遊ボッつて了見でしよつて?・・・ムッ、読みが深い・・・ばーろー、何を言はせんだ、亭主の言ふ事を聞けねえのか、サッサと行つて来おい。
ケッ、何といふ気のきかねえアマだ、亭主の気持ちもわからねえ、いつてえ何年一緒にゐるんでえ。
・・・・・ああ、WXYZ・・・オオット間違えちまつたダブダブ姉妹のあのしんなりした身のこなしが瞼に浮かぶぜ。
『ええとこ』も『無事でいい』のあのそそくさとした身のこなしもよかつたなあ。あんましそそくさ過ぎて話を混ぜつ返すとこもあつたけど。
・・・・フン、まあな、しつかし何だ、あの「風」女房もなあ、なんだかんだ言つたところで良くやつてるよ、おいらあ、ハッキリ言つて浮気モンだ、アッチにいい(えふいいぴい)がゐると聞けば茶を喫んで、コッチにハクいのがゐると聞けば酔つぱらふ。ああだかうだで幾星霜か。
・・・・ふう。
照鏡見白髮 張九齢
宿昔青雲志
嵯陀白髮年
誰知明鏡裏
形影自相憐
・・・・つてか。
ケッ、らしくもなかつたかな。
この、おいらが・・・・。
いけねえ、いけねえ、おいらも年かな、こんな一人言をつい口にしちまつて、『ええとこ』でも『無事でいい』んとこでもヤアナ顔されちまつたつけ。ああいふのを【撫然たる】表情つてえのかね。
それにしても、あのやろうにちよいと言ひ過ぎたかな。
まあ俺が何をする時でも、裏に引つ込んで仕事の段取りをしてくれてるんだからなあ。
まあ、例の姐さん達みてえに、のべつ一緒といふ訳でも無い。
仕事になると、ツイと裏に引つ込んで・・・気がきかねえつて言つたつて、あいつは俺がやることをやればツーカーでやつてくれるんだからなあ。
まあ、シンナリした風情つてのはネエけれど、考へてみればあんなにシャキシャキした女もゐねえわな。
話を混ぜつ返しもしねえし、どんな一人言を言つたところで、気色ばんだりしねえ、
おいらがドヂをやつても「ピー」と一言、あとは默つて見てゐてくれるしよお。
それに何だよ、俺がどんなに浮気をしても、帰つて来ればなんにも知らんふりしてトコトコ俺の酒を夜中になつても買ひに行つてくれるんぢやあねえか。
ウッ、ウッ、ウッ、チキショーめ、泣けてくるほどいい女じやあねえか。
ウッ、ウッ、ウッ、オーイ、オイ、オイ、オ・・・・ああ、な、なんだあ!!
て、てめえ、『和』の字のついた徳利をぶらさげて、まあだそんなとこにゐたのかァ!?
★註1「風」は冨樫 雅文様作のimeです。
詳しくは「風のくに」サイトへ
★註2 本文はDOS版の「風」で書いてゐます。
Windows版では「和」の字は表示されません。
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どうも何だね、ダブダブ姉妹のピーちやんにツーちやんか、なかなか気がきいてゐましたよ。
世間様てへものは、うつらふものなりつてか。
俺も、なんだ、世の中にウトくつてイケねえや。
この際だからつてえんで、久々に『ええとこ』んとこと『無事でいい』んとこにも顔を出して、日頃の無沙汰見舞ひのつもりが、ずいぶん遅くなつちまつて。
それにしてもどこの姐さんも、いつの間にやらすつかり新しい身づくろひをしてるんだもんなあ。
『地所』をたつぷり持つたりしちまつて、すつかり見ちげえて、「これはトレンディーな『ぶんぽう会席』どすえ、おめし上がりになつて」なんて言ふもんだから、すつかりゴチになつて、ずいぶん長居になつちやつた。
・・・・おおい、帰つたぞお。
シッカシうちの風女房、アイソもコソも無い奴だなあ。
世間を見渡してきたら、しみじみ感じてしまふねえ。
亭主がやつと戻つて来たといふのに『お帰んなさい』の一言もねえんだから。
それどころではありません。
「おまへさんねえ、遊んでばつかゐたら、それまでなんだヨォ。ジンセイ、棒に振つていいもんかね。」と言ひたさうな、何とも不景気な面で迎へてくれるではないか。
さうかひ、さういふ奴だつたのか、てめへつてやつァよお。
いくら広い『地所』と『会席』に縁がねえ暮らしだからつて、もちつと、はんなり、しんなりの風情があつてもいいじやあねえか。
はつきり言つてをくが、俺はおめえが最良の連れあひだなぞとは思つてもゐないのだぞ。
添ひ遂げやうなんぞと、思つちやあゐねえや。奇妙に手に馴染むのはやめてをけ。ケッ、いつ出てつて貰つたところでこちとら、痛くも痒くもねえんだ。
オメエといふヤツァなあ、誰にも使ひ手がねえ、貰ひ手がねえつてから、マァ情をかける気でをいてやつてるんだ。
ちよいとダブダブ姉妹やら『ええとこ』やら『無事でいい』の姐さん方んとこに出向いたからつて、不愛想になるんじやあねえ。
・・・・あんだあ、愛想がねえのは生まれつきだと。
チェッ、その言ひぐさが気に入らねえんだよ。
なんだよ、愛想つてのはどうすりやあいいかつて?
このやろう、よおし、この際だから教えといてやらあ。
まず、亭主が帰つて来たらチョックラ小首をかしげてだな、
『お早い丘縁でござい舞。臣足をお洗いいたしますの、剃れとも御種をお召し上がりに成増の』とか、
『亜煩、待つ手田湾、さびし勝田の四。』とかと、・・・・
おや?何がおかしい。
ゲラゲラそつくり返つて笑ひやがつて。ぞんざいなやつだなあ。
てめえの大口に『++++++++++++++++++++』、してやりてえよ。
何のことですかあ?チャックをしてやりてえと言つたんだよ。
気の効いたタチマワリも出来ねえ、物は覚えねえ、身なりも良かあねえ、御先祖サマだつて大したものはゐねえ。
それが証にやあ未だにばーじよん2、2じやあねえか。いいか、エエトコのムスメつてえのはなあ、ばーじよん10ッテエのがゐるんだぞお。
・・・な、な、なんだ、なんだ、ばーじよん10てえのは10回も再生手術のアチラのせわになつた御新造サマのことだつて?
『+++++++++++++++++++』みたいなお手当ての痕が、あつちこつちにある方たちだとお・・・コンチキショー、なんてえことをヌカシやがんでえ。
色気のイの字もねえ野郎が、くだらねえ見栄をはつてねえで酒を持つて来い。
・・・あんだよ、酒はネエだとお。クソババア、無きやあ買つてくればいいじやあねえか。横丁によお、おでん屋がまあだ店を開いてゐるんだ、徳利を持つて行つて来い。
・・・あんだとお?・・・アタシがゐない間に、まあた出歩いてヘンテコリンなことをして遊ボッつて了見でしよつて?・・・ムッ、読みが深い・・・ばーろー、何を言はせんだ、亭主の言ふ事を聞けねえのか、サッサと行つて来おい。
ケッ、何といふ気のきかねえアマだ、亭主の気持ちもわからねえ、いつてえ何年一緒にゐるんでえ。
・・・・・ああ、WXYZ・・・オオット間違えちまつたダブダブ姉妹のあのしんなりした身のこなしが瞼に浮かぶぜ。
『ええとこ』も『無事でいい』のあのそそくさとした身のこなしもよかつたなあ。あんましそそくさ過ぎて話を混ぜつ返すとこもあつたけど。
・・・・フン、まあな、しつかし何だ、あの「風」女房もなあ、なんだかんだ言つたところで良くやつてるよ、おいらあ、ハッキリ言つて浮気モンだ、アッチにいい(えふいいぴい)がゐると聞けば茶を喫んで、コッチにハクいのがゐると聞けば酔つぱらふ。ああだかうだで幾星霜か。
・・・・ふう。
照鏡見白髮 張九齢
宿昔青雲志
嵯陀白髮年
誰知明鏡裏
形影自相憐
・・・・つてか。
ケッ、らしくもなかつたかな。
この、おいらが・・・・。
いけねえ、いけねえ、おいらも年かな、こんな一人言をつい口にしちまつて、『ええとこ』でも『無事でいい』んとこでもヤアナ顔されちまつたつけ。ああいふのを【撫然たる】表情つてえのかね。
それにしても、あのやろうにちよいと言ひ過ぎたかな。
まあ俺が何をする時でも、裏に引つ込んで仕事の段取りをしてくれてるんだからなあ。
まあ、例の姐さん達みてえに、のべつ一緒といふ訳でも無い。
仕事になると、ツイと裏に引つ込んで・・・気がきかねえつて言つたつて、あいつは俺がやることをやればツーカーでやつてくれるんだからなあ。
まあ、シンナリした風情つてのはネエけれど、考へてみればあんなにシャキシャキした女もゐねえわな。
話を混ぜつ返しもしねえし、どんな一人言を言つたところで、気色ばんだりしねえ、
おいらがドヂをやつても「ピー」と一言、あとは默つて見てゐてくれるしよお。
それに何だよ、俺がどんなに浮気をしても、帰つて来ればなんにも知らんふりしてトコトコ俺の酒を夜中になつても買ひに行つてくれるんぢやあねえか。
ウッ、ウッ、ウッ、チキショーめ、泣けてくるほどいい女じやあねえか。
ウッ、ウッ、ウッ、オーイ、オイ、オイ、オ・・・・ああ、な、なんだあ!!
て、てめえ、『和』の字のついた徳利をぶらさげて、まあだそんなとこにゐたのかァ!?
★註1「風」は冨樫 雅文様作のimeです。
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★註2 本文はDOS版の「風」で書いてゐます。
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