昼下がり
電車の中は、乗客はまばらだつた。
若い女が、和田芳恵を読んでゐる。銀行の紙袋を左脇に抱へ込んで、膝に広げた文庫本を熱心に読んでゐる。
着てゐるのは白地にグリーンの線が胸元を斜めに走る、どこぞのユニフォームで、会社の仕事で電車に乗つてゐるのだと知れる。
この人は会社が、まあ、楽しいのではあるまひか。
本を読むスピードが実に遅い。
ページをなかなかめくらない。まどろんでゐるのかと思へば、つけまつげが時折まばたきするので、うつ向いてゐるが眠つてはゐないらしい。
五十歳は過ぎてゐるらしい和服の女が、マッキントッシュ・クラシックのカタログに見入つてゐる。
思ひ詰めたやうな目に見えるのは気のせいだらうか。
この人は墨絵風の挿し絵の入つた、歌集でも作りたいのかもしれない。
そのカタログの下にはアミガのカタログも見える。
歌集を作りたいのではないかもしれない。
ハンドバッグから色鉛筆をだして、カタログの一行に、紅の線を引いた。
若い男であれば、こんなにも熱心にカタログを読むやうな品は、もはや手に入れる気にはならないだらう。
手に入れやうとしてゐるならば、カタログをこんなにも熟読することはないやうな気がする。
この人はどうするだらう。
額にうつすら脂が浮かんでゐる。
心持ち前に体を倒してゐるが、時折背もたれに拠りかかり、深い物思ひに沈むそぶりを見せる。
この人はマッキントッシュを買ふかもしれない。
テクノラティプロフィール

電車の中は、乗客はまばらだつた。
若い女が、和田芳恵を読んでゐる。銀行の紙袋を左脇に抱へ込んで、膝に広げた文庫本を熱心に読んでゐる。
着てゐるのは白地にグリーンの線が胸元を斜めに走る、どこぞのユニフォームで、会社の仕事で電車に乗つてゐるのだと知れる。
この人は会社が、まあ、楽しいのではあるまひか。
本を読むスピードが実に遅い。
ページをなかなかめくらない。まどろんでゐるのかと思へば、つけまつげが時折まばたきするので、うつ向いてゐるが眠つてはゐないらしい。
五十歳は過ぎてゐるらしい和服の女が、マッキントッシュ・クラシックのカタログに見入つてゐる。
思ひ詰めたやうな目に見えるのは気のせいだらうか。
この人は墨絵風の挿し絵の入つた、歌集でも作りたいのかもしれない。
そのカタログの下にはアミガのカタログも見える。
歌集を作りたいのではないかもしれない。
ハンドバッグから色鉛筆をだして、カタログの一行に、紅の線を引いた。
若い男であれば、こんなにも熱心にカタログを読むやうな品は、もはや手に入れる気にはならないだらう。
手に入れやうとしてゐるならば、カタログをこんなにも熟読することはないやうな気がする。
この人はどうするだらう。
額にうつすら脂が浮かんでゐる。
心持ち前に体を倒してゐるが、時折背もたれに拠りかかり、深い物思ひに沈むそぶりを見せる。
この人はマッキントッシュを買ふかもしれない。
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上下巻買って、面白くなかったらいけないので、上巻だけ買いました。予想的中でした。渡辺さんの表現力は素晴らしいなと思うのですが、内容はどうも・・。日経で掲載されていたとのことでしたので、毎日、掲載されていた新聞で読めば良かったのかもしれません。せっかくの話
2007/09/26(水) 07:06:58 | まいのblog




















