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§「草の宿」目次
§「フラメンコ小曲集」
◇「ブレリアス・朱夏(1)」◇「ブレリアス・朱夏(2)」
◇「ファルーカ・犬の明日(1)」◇「ファルーカ・犬の明日(2)」
◆シギリージャ・斜面のある風景◆ソレアレス・腰痛幻想曲
§「ラ・ベラ【冬のシギリージャ】」
◇(1)家出◇(2)捨てられたダリア◇(3)ひとり行く◇(4)黒いシューバ
◇(5)夜の楼◇(6)朱い花
◆「手ぶらのみやげ」 ◆「ホタル」 ◆「林檎」
◆「メジロ」 ◆「川魚達」 ◆「干し物」
§「叫び沢」
◇(1)猫車◇(2)枡落とし◇(3)母の在所◇(4)二匹の犬◇(5)犬の悲鳴
◇(6)両親の死◇(7)母の涙◇(8)水車小屋◇(9)決意
◇(10)水神様の境内で◇(11)祭りの日◇(12)古い唄◇(13)祈り
§「勉強堂から夢やへの界隈」
◇(1)午後の五時◇(2)酔夢
§「西瓜」
◇(1)そもそもは夜更けに◇(2)三叉路◇(3)闇の底の畑で
◇(4)透垣の上の青い光◇(5)街灯の下で妻君が消えた
◇(6)人殺し◇(7)犯人◇(8)西瓜の果肉は
◆夢ならよかつた一夕◆虫食いの記憶◆ジャーバ(Njava)
◆宗子◆昼下がり◆田園◆夢、もつれる
◆今朝の夢◆茅の葉◆露天の二人◆砂丘にて
◆「ホトトギス」◆「グーズベリー」◆雪釣り◆橋梁からの眺め◆植物園で
§「名前の迷宮」
◇(1)蜂いろいろ◇(2)蜂、もう少し◇(3)カワセミ、セキレイ◇(4)イチゴ
§「山に向かひて云ふこと無し」
◇(1)無言の山◇(2)雑木林で◇(3)山、暮色に消ゆ
§「サイレントギター日記」

◇(1)遭遇◇(2)秘儀◇(3)九月の夕暮れ◇(4)秘儀・馬の骨
◇(5)秘儀・赤翡翠◇(6)永遠のエスキース◇(7)『ア、秋だ』の瞬間
■サイレントギターでフラメンコを弾くための一工夫
§「涛藏伝」
◇其の一 涛藏が来た◇其の二 涛藏再訪◇其の三 またしても来た涛藏
◇其の四 二番煎じ◇其の五 幽明譚
§「ブログ入門記」
◇(1)指南書にあらず◇(2)タッチおばさん讃◇アクセスの怪(3)
◇(4)わかつたら、頓挫◇(5)ブログで更正は無理だ◇(6)ネタが切れたら
◇(7)「目次」の復活◇(8)かたちから脱するのだと、思つてはみるものの
◇(9)ドツキまわすもの、背後に物の気配が・・・
§「冷奴日記」
(1)豆腐は冷奴にかぎる(2)BIOSを読み込めない
(3)グラフィックボードが悪いのか(4)速攻パーツ買い
(5)マザーボードに神を見た (6)まっ白けのけ
◆風女房
「フラメンコノート」
§「フラメンコの起源と発展」
■(1)ドゥエンデ ■(2)フラメンコの語源 ■(3)フリジア旋法
■(4)カンテ・ヒターノ ■(5)アンダルシアのカンテ ■(6)カフェ・カンタンテ
■(7)ラモン・モントヤ ■(8)カンテ・ホンド
■(9)ラ・アルヘンティニータとカルメン・アマヤ
■(10)カンテ・フラメンコ・アンソロジーとタブラオ
■(11)カンテ、バイレ、トーケの表現
§「現代フラメンコギター」
■(1)アントニオ・デ・トーレス・フラド
■(2)ビセンテ・アリアスとマヌエル・ラミレス
§「フラメンコに於けるギター」
■(1)ラスゲアドとファルセータ
■(2)ハヴィエル・モリーナとラモン・モントヤ
■(3)ペリーコ・エル・デル・ルナールとマノロ・デ・ウエルバ
■(4)ニーニョ・リカルド
■(5)アグスティン・カスティリョン・”サビーカス”
■(6)パコ・デ・ルシア、セラニート、サンルーカル
■(7)マニータス・デ・プラタ、ホアン・セラーノ、パコ・ペーニャ
■(8)ホアン・マルティン
■(9)フラメンコのギター・ソロ
§「トーケ概説」
■(1)トーケ・リブレとトーケ・ア・コンパス ■(2)1960年マドリッド
§「いくつかのトーケ解説」
■(1)ソレアレス ■(2)ブレリアスとシギリージャ
■(3)ファンダンゴ、グラナディーナス、タランタス
§「ギターメソッド」
■コンパス ■フラメンコギター ■フラメンコギターの弦
■ギターの手入れ ■弦の手入れ ■ギターのための爪の手入れ
■セヒージャCejilla(カポタスト) ■トーケ
■アイレ
■サイレントギターでフラメンコを弾く
★フラメンコリンク集
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「見ろや、あれを」
男は窓から身を乗り出すようにのばして、一声、唸るように言いました。
「おじさん、どうしたんだい。おじさんの頭の上で、蚊のやつがワクワクして見下ろしているよ」
尋夫がからかうように言っても、男は窓からのばした上体を元に戻そうとはしません。窓の框から、外に転げ出しそうな姿勢です。
見ろと誘っておきながら、男は窓辺を離れません。凝然として、窓枠にはまりこんだかのようです。
「おじさん、月がそんなにきれいかい。満月ではなかったようだが」
澄み渡った夜の空を埋め尽くす星の多さ、そして月の燦とした輝きには、山に住みついた尋夫でも、見上げるたびに感歎してしまうのです。
天との距離を思えば、里から小屋のあたりまで登ったとて、なにほどの違いがあるものかと思うのですが、小屋から見上げる夜の輝きは、かつて見知った星や月の姿ではありません。
「・・・・月ではないよ」
男はかすれたような声でぽつりと言い、やっと窓辺を離れました。男と入れ替わりに窓から身を乗り出して、男の見ていた方角に視線をやって、尋夫は息を呑みました。
それがなになのか、にわかにはわかりませんでした。
月は鎌。
中天に淡黄の鎌の刃は鋭く光り、天の河はしぶきをなして流れ落ちてきそうですが、それらの天のさざめく光の下に、青く、白く、そして縹色に変化して明滅する輝く木が立っていたのです。
黒い夜の山肌を背景に、木は輝く花を明滅させていたのです。
あまりの変貌に、尋夫はそれが池の端のハリエンジュであることすら、一瞬忘れていました。ただあっけにとられ、息を呑み、背筋を恐怖のようなものがかすめたのを感じるのでした。
「・・・・ホタル、か」
全身を泡立たせたような畏怖の感覚が流れ落ちて、今度は腹の底から熱いものが湧き上がるのを覚えました。
男はひょいと炉端のシューバを引っかけて、小屋の外へ出ようとしています。尋夫も後を追いました。
おびただしい数のホタルが、ほころび始めたハリエンジュの花と言わず、葉と言わず、枝の全体にちりばめられたように集まり、無言の明滅をしているのです。
池水には、輝くハリエンジュがさかしまに映しだされていました。
「どうしてだろう、こんなにもホタルがハリエンジュに集まったのは」
硬直して口元がもつれるような気配に、違和感を覚えながら尋夫がつぶやきました。
「さあてなあ、この池がよほどカワニナには具合が良かったのかな」
男の口調はのんびりとしています。尋夫はその声に、我を取り戻したような気がしました。
「だけど、どうしてハリエンジュにばかり集まるんだ。花の匂いに誘われたんじゃないだろ」
「どうしてなのかはわからんが、ホタルはあれが好きなんだろうよ。生き物にはそう言うところがあるじゃないか。スズメもそうだし、蛾もそうだ。俺らにはわからない、選び方があるんだろうよ。だが、みごとなものだなあ」
「・・・・いきなりには、何が何だかわからなかったよ。俺が一人だったなら、叫んでいたかも知れないな」
尋夫はやっと人心地を取り戻したような気持ちでした。
「おじさん、待ってな、熱い燗をつけたのを持ってきてやるよ」
薪に腰を下ろした男に、ふと思い立って尋夫は言いました。
テクノラティプロフィール




















